第3回 脳梗塞 (Cerebral Infarction)
62歳のJさんは、軽い高血圧のある主婦。ある日起きると、何かおかしな感じがします。歩くと体が右の方へ傾くような気がするのです。夫と話をするとどうも話しが明瞭ではありません。自分の話したいことの10分の1もしゃべれない感じです。当日病院の救急室を受診したJさんは医師より「脳梗塞」だと診断されました。神経学的異常も軽度で、状態の安定していたJさんは薬をもらって帰宅しましたが、いろいろな検査とリハビリを受けることになりました。

脳梗塞は脳の主要な血管の閉塞によって起こり、様々な神経学的異常を呈します。主な原因は動脈硬化ですが、他に心房細動などの不整脈や他の心臓の病気、あるいは抗リン脂質抗体、高ホモシスティン血症等によって起こることもあり、こうした原因の精査も重要です。脳梗塞の前駆症状としてTIA(一過性脳虚血)という短時間(24時間以内)で治る神経学的異常を起こすことがありますが、TIAがあった時は原因の追求が不可欠です。

脳梗塞の症状は、閉塞する血管の場所によって変わってきますが、普通どちらか一方の手足の筋力低下を起こすことが多く、軽度であれば体が傾いたり、軽くびっこを引く程度です。他に明瞭にしゃべれなくなったり、吐き気、感覚異常、眼振が起こることもあります。脳梗塞が疑われるとまず脳のCT(コンピューター断層撮影)を取り、脳内出血でないことを確かめます。MRI(核磁気共鳴画像)を取ることもありますが、発症後48時間以内は脳内出血の判断が難しいので、救急室ではCTが主に使われます。脳梗塞発症後3時間以内であれば、血栓溶解剤投与の適用になることもありますが、禁忌事項も多く、血栓溶解剤投与後はICU(集中治療室)に入院になります。アメリカでは、脳梗塞でも状態がおちついていたり、時間がたっていると必ずしも入院にはなりません。ただし数時間観察する必要があるので、主治医ないし救急室に連絡を取ることが必要です。その後、上記で述べた原因の追究と高血圧、糖尿病、高脂血症などの基礎疾患の精査とアスピリン等の内科治療、リハビリ等が必要になってきます。

サンディエゴの日系紙「Lighthouse San Diego」に2003年1月16日号に掲載。