第75回 偽脳腫瘍 (Pseudotumor cerebri=PTC)

 

症状: 頭痛、嘔気、複視 

 

 Tさんは、35歳の太り気味の女性です。23ヶ月前より拍動性の頭痛と嘔気が始まり、最近物が二重に見えてきました。近所の内科医を受診したところ、頭部MRIで異常がなかったものの、腰椎穿刺という検査の結果、髄液圧が上昇しているので偽脳腫瘍と診断されました。薬を処方されましたが、症状が改善しないので、何度か腰椎穿刺を受け髄液を取り除くことになっています。

 

  偽脳腫瘍は、脳腫瘍が存在しないにもかかわらず、あたかも脳腫瘍があるかのように脳圧が亢進し症状を起こす病気です。何故脳圧が高くなるか原因不明ですが、脳脊髄液の吸収障害によって起こるのではないかと考えられています。脳や脊髄は、外界からの衝撃に耐えるために脳脊髄液に満たされていますが、この脳脊髄液が多くなりすぎると、脳や脊髄を過度に圧迫し、頭痛や吐き気などのいろいろな症状を起こします。 

 

 偽脳腫瘍のリスクとしては、20歳から50歳までの太り過ぎの女性、閉塞性睡眠時無呼吸、SLE(全身性エリテマト-タス)、慢性腎疾患、ベーチェット病、薬(リチウム、経口避妊薬、テトラサイクリン、ステロイド、ビタミンAの大量摂取=例えばにきびの治療)、頭部外傷、ライム病、伝染性単核症などがあります。 

 

 症状としては頭痛、吐き気、嘔吐、耳鳴り、複視(物が二重に見える)、視力異常、鼓動性の耳鳴りなどです。頭痛は、頭部全体に起こる拍動性ですが、目の後ろから起ったり、痛みで睡眠中に目が覚めたり、朝ひどくなったりします。また、目の動きや、くしゃみ、咳で頭痛が悪化することもあります。まれな症状としては、四肢のしびれ、匂いの感覚喪失、筋協調の低下があります。長期、無治療で放置していると失明になる危険性があるので早期の診断治療が重要です。 

 

 眼底検査で乳頭部の浮腫があると診断の一助になります。他の検査としては、頭部のCTMRIなどの画像診断で、脳腫瘍など他の原因を除外します。腰椎穿刺で髄液圧が亢進していることがほぼ診断の条件になります。

  

 

 治療は、太り過ぎの人は体重減少。髄液圧を下げるためにはアセタゾラマイドなどの薬物治療や腰椎穿刺。頭痛には、非ステロイド系抗炎症鎮痛薬、アミトリプティリンなどの利用。こうした治療で改善のない時は、シャント形成などの外科的治療の対象になります。

   

 

記事中の患者さんは架空の患者さんです。

 

サンディエゴの日系紙「Lighthouse San Diego」2009年1月16日号に掲載