| 第107回 骨粗しょう症(Osteoporosis) |
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アメリカでも日本でも高齢化に伴い、骨粗しょう症の患者数は増えてきています。アメリカでは50歳以上の人約1000万人が骨粗しょう症、3400万人が骨粗しょう症の予備軍の範疇に入ります。骨粗しょう症の5人に4人が女性で、50歳以上の女性のうち2人に1人が、男性は4人に1人が生涯の間に骨粗しょう症による骨折を経験します。
骨粗しょう症とは?
骨粗しょう症は、骨量及び骨の密度が低くなって骨がもろくなり、骨折をしやすい状態になる病気のことですが、年齢とともに進行していきます。 骨は生きた組織で、絶えず新しい骨が新生 (骨新生) され、古くなった骨は吸収 (骨吸収) され、失われていきます。こうした骨の新陳代謝は骨のリモデリング (骨改変) と呼ばれていますが、年齢とともに変化していきます。 骨のリモデリングは学童期から思春期にかけて活発になり、骨新生が骨吸収を上回り、骨の量が増え、骨が成長していきます。骨量のピークは20歳代前半で、その後、しばらくは骨量に著しい変化はありませんが、40歳を過ぎると次第に骨量が少なくなっていきます。女性は閉経後のエストロゲンの低下に伴い、数年で急速に骨量を失います。 骨粗しょう症があると骨折しやすくなります。背堆、大腿骨頚、手首に多く、脊椎や大腿骨頚の骨折は日常生活の障害、慢性的な痛みの原因となり、生活の質 (QOL) にも大きく影響します。
原因とリスク
骨粗しょう症の最も一般的な原因は、加齢による骨のリモデリングのアンバランスですが、これには性ホルモンの低下も関与しています。男性の場合は骨量の低下は徐々に進行しますが、女性の場合、閉経後に急速に骨量を失っていきます。 骨粗しょう症のリスクとしては、思春期に十分骨量を増やしておかなかったことが重要で、骨量のピークの低い人は、その後の人生において骨粗しょう症の大きなリスクになります。 他のリスクとしては、カルシウムやビタミンDの摂取量が少ない、小柄な骨格、骨粗しょう症 (特に骨粗しょう症による骨折をした人) が家族にいる、喫煙、アルコールの過度の摂取、運動をしない、ある種の病気 (甲状腺機能亢進症、拒食症、クローン病、胃切除、ビタミンD欠乏症、糖尿病、がんなど)、骨量を下げるような薬の使用 (メソトレキセート、抗けいれん薬、利尿薬、制酸剤など)、初潮が遅く閉経が早い、閉経後乳がんに対する化学療法、ソーダをよく飲む――などです。
症状
骨粗しょう症自体は症状がありませんが、骨折をすると痛みが起こります。ただし、脊椎の骨折があっても、あまり痛みの自覚のない人もいます。背が低くなったり、前かがみの姿勢になると背堆の圧迫骨折の可能性があります。脊椎以外に大腿骨頚部、手首も転倒による骨折をしやすい部位です。
診断
骨粗しょう症の診断は、DEXA (デキサ法) というレントゲン検査で脊椎、大腿骨頚、手首の骨密度を測定するのが一般的です。被爆する放射線量も少なく、簡単に検査できます。他に、超音波やCTを利用した検査法もあります。 デキサ法でTスコアという値が-2.5以下の時、骨粗しょう症と診断されます。Tスコアが-1.0から-2.5の場合は骨粗しょう症予備軍になります。 検査の対象になる人は65歳以上の女性、60歳以上の女性で骨折のリスクがある、50歳以上で骨折の経験がある、長期ステロイドを服用している、早く閉経があったり、無月経期間の長い女性などです。
骨粗しょう症の治療
<薬物療法>
=ホルモン補充療法=
女性ホルモンであるエストロゲン単独、あるいはエストロゲンとプロゲステロンの組み合わせによるホルモン補充療法は、更年期症状を改善するだけでなく、骨密度を増加させ、骨の吸収を低下させます。ただし、長期使用により乳がんや脳卒中に罹患する確率が少し上昇する可能性があります。
=ビスフォスフォネート(Bisphosphonate)=
エストロゲン同様、骨の吸収を防ぎ、骨量を保ちます。alendronate (Fosamax=商品名、以下同様)、risedronate (Actonel)、ibandronate (Boniva) などがあります。 食道炎の副作用があるので、空腹時にコップ1杯の水と一緒に飲み、服用した後、1時間ほど横にならないようにします。2007年からは1年に1回の注射でいい zoledronic acid(Reclast)がアメリカでは許可されています。他に、静脈注射で受けられるもとして pamidoronate (Aredia) や zoledronic acid (Zometa) があります。
=Raloxifene (Evista)=
この薬は SERMs という選択的エストロゲン受容体モデュレーターと呼ばれるもので、骨に対してはエストロゲン作用を持っていますが、エストロゲンの持つ子宮体癌や乳癌のリスクはありません。ただし、血栓症、脳卒中、心筋梗塞のリスクを上げると報告されています。これは女性が対象です。
=Calcitonin (Calcimar, Miacalcin, Fortical)=
甲状腺で作られるホルモンで、骨吸収を少なくし、骨密度の増加を助けます。鼻スプレーや注射の形で使用します。ただし、ビスフォスフォネートほど強力ではないので、ビスフォスフォネートが使えない人が対象です。副作用としては、顔や手のほてり、頻尿、嘔気、皮疹、鼻の不快感などがあります。
=Teriparatide (Forteo)=
合成副甲状腺ホルモンの注射です、強力な薬で、骨粗しょう症のある男女ともに使用可能です。他の薬と違って骨新生を促します。1日に1回の皮下注射で、現在では2年以内の治療しか認められていません。副作用は、嘔気、目まい、足のけいれんなどです。
=植物由来のエストロゲン(Phytoestrogens)=
豆腐や他の大豆製品などに含まれ、弱いエストロゲン作用があり、更年期症状にはある程度の効果がありますが、骨粗しょう症に対しては効果がありません。
<カルシウムとビタミンD>
前述の薬物治療とともに、十分量のカルシウムとビタミンDを取る必要がありますが、「予防」の項目で詳しく説明します。
<理学療法>
背部痛を和らげ、転倒のリスクを下げる理学療法があります。それは WKO という装具 を利用するものですが、午前と午後に30分ずつ装着し、その間10回ずつの背中を伸ばす運動をします。
骨粗しょう症の予防
<カルシウムとビタミンD>
十分量のカルシウムとビタミンDを食事または錠剤で取ります。他にビタミンKも骨新生には必要です。1日当たりのカルシウム必要量の目安は、一般の成人は1,000mg、閉経後の女性と50歳過ぎの人は1,200mg。日本人の場合は最低800mg。ビタミンDは50歳以下の成人は1日200 IU (国際単位)、50歳から70歳は400 IU、70歳以上は600 IU。ただし、取りすぎにも注意してください。1日当たりカルシウム2,500mg、ビタミンDは2,000 IU 以上は取らないようにします。 カルシウムの多い食品は、乳製品、濃緑野菜 (ブロッコリー、ボクチョイなど)、いわし、アーモンド、骨付きサケ、大豆製品、カルシウム入りオレンジジュースやシリアル。腎結石のある人はカルシウム錠剤よりもなるべく食事からカルシウムを取るようにします。カルシウム製剤で便秘の起こる人は、リン酸カルシウム (Calcium phosphate) やクエン酸カルシウム (Calcium citrate) を取るようにするといいかもしれません。 ビタミンDはカルシウムの吸収に必要です。1日当たり15分間、日焼け止めクリームなしで日光にあたると1日の必要量が生成されます。ただし、高齢になるに従って体内でのビタミンDの生成は少なくなります。食べ物では、脂肪分の多い魚、魚オイル、サケ、ウナギ、サンマ、カレイ、シイタケ、キクラゲに多く含まれています。ビタミンD入りの牛乳やシリアルもあります。
<運動> 運動により骨密度の低下を防ぐだけでなく、筋力や筋の協調性を増進することによってバランスを保つことができ、転倒防止にも役に立ちます。すでに骨粗しょう症のある人はインパクトの大きい運動は避けます。 骨粗しょう症の予防のためには体重のかかる運動を行います。歩行、ランニング、ダンス、ジョギング、エアロビックス、階段の昇降、縄跳び、スキーなど。水泳、自転車などは有酸素運動で体には良いのですが、骨粗しょう症の治療・予防という点ではあまり適切ではありません。
<ライフスタイルの改善> 特に大切なのは、禁煙をすること、アルコール消費量を適度に抑えるということです (1日コップ1杯程度の酒量)。
<その他のリスク改善>
糖尿病、甲状腺機能亢進症などの病気のある人は、それらの病気の治療をすることが重要です。また、骨密度を下げるような薬物を使用している人は、他の薬に替えることができるか、あるいは予防薬を同時に使用すべきか、医師と相談してください。
骨折の予防
骨折の予防には、背筋を正す方法、プロテクターを使用する方法、転倒防止があります。上部の背筋を伸ばして脊椎にかかる負担を下げます。座ったり、運転をしている時は腰に巻いたタオルを当て、読書や手仕事をする時は前屈みにならないようにします。 転倒しやすい人は SAFEHIP のようなヒッププロテクターを着用します。転倒の予防としては、視力、バランス感覚、筋力を維持します。転倒しないように、家の中につまずく原因になるものを置かないようにしたり、段差をなくします。階段には手すりを付け、シャワー、トイレ、風呂場にはつかめるようなハンドルを付けます。バスタブには滑り防止マットを敷きます。家の中でも外出時でもスリッパは避けます。そして、家の中は十分に明るくします。外出時には杖やウォーカーを使い、滑らない靴を履きます。
サンディエゴの地元日系紙「ゆうゆう」の2009年7月1日号に掲載
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