第68回 萎縮性膣炎(Atrophic Vaginitis)

症状: 膣や外陰部の痛み・かゆみ、排尿時の違和感

 

 58歳のOさんは、閉経後に何度も排尿時の違和感と頻尿に悩まされ、その度膀胱炎と診断され抗生物質を服用しました。今までは抗生物質も効いていましたが、今回は抗生物質もあまり効果なく、尿の細菌培養も陰性で、どうも膀胱炎ではなさそうです。

萎縮性膣炎は、閉経後の女性に多く、エストロゲンという女性ホルモンの低下によって起こる病気です。閉経後の女性の14割の人に萎縮膣炎症状があると推測されています。エストロゲンが低下すると、子宮の壁や粘膜が薄く萎縮し、潤滑性がなくなり、膣内がアルカリ性に傾き、炎症が起こりやすくなります。閉経前の女性でも、卵巣摘出、出産直後や授乳の継続、抗エストロゲン作用のある薬の使用、放射線治療や化学療法などによって萎縮性膣炎は起こります。閉経後のエストロゲンの低下は女性器だけでなく、尿路系組織の萎縮も起こします。

 閉経後、膣や尿路の感染にかかりやすくなりますが、これはエストロゲンの低下により、膣内の乳酸菌が少なくなって膣内がアルカリ性に傾き、自然の感染防御力が低下するからです。

 萎縮性膣炎の症状としては、膣や外陰部の違和感、乾燥、痛み、かゆみ、熱感、おりもの、圧迫感、性交痛や性交後の出血などがあります。また、尿路系の症状として排尿時の痛みや違和感、血尿、頻尿、尿漏れなどです。膀胱炎を繰り返すこともありますが、感染がなく膀胱炎症状だけのこともあるので、何度も膀胱炎になる人は抗生物質が必要かどうか尿の細菌培養する必要があります。

 内診では、薄く色褪せてつるつるした膣、膣粘膜での斑状や点状出血、膣や外陰部の柔軟性の欠落などが見受けられ、内診やクスコ挿入時に痛みを伴います。検査としては、おりもの検査、子宮頸がん検査、閉経が定かでない場合は血液ホルモン検査、尿路症状のある場合は尿一般検査、尿培養など。場合によっては膣の超音波検査が必要になります。

 治療は、エストロゲンの投与ですが、クリームや膣錠による局所治療と経口錠やパッチなどを使った全身治療があります。感染のある場合は、原因菌に応じた抗生物質による治療をします。エストロゲンを使いたくない人は、膣や外陰部に潤滑クリームを使用する方法もあります。

 

記事中の患者さんは架空の患者さんです。

サンディエゴの日系紙「Lighthouse San Diego」に2008年6月16日号に掲載