第83回 自閉症 (Autism)その2

自閉症のスクリーニング
 
 自閉症であるという診断は、早期発見
早期介入の立場から、なるべく早期に、それも正確に行う必要があります。ただ、自閉症の診断自体簡単ではないので、先ず自閉症の可能性のある子供を発見するスクリーニングが必要になります。自閉症の症状徴候は1才半までに出ることが多いのですが、23才にならないと診断されないことがあります。23才で話し言葉の発達の遅延は顕著になっていくので、診断が容易になるものと思われます。前回で列挙したような発達の遅れ、自閉症の症状徴候に気付いたなら、なるべく早く小児科医に相談して下さい。
 小児科医は健診のたびに、簡単なスクリーニングで発達の程度を評価します。自閉症を疑うと、より詳しいスクリーニング手段を使用し、子供の発達や行動について評価します。スクリーニングの方法は、両親からの情報に基づいたものもあれば、医師の観察に基づいたものもあります。そして、自閉症の可能性があれば、発達の専門医や他の専門家に紹介されます。
 乳幼児の脳は発達途上です、従って、早期発見
早期介入によって可能性を生かすことができるのです。ただ、どの年齢でも介入による利点があるので、発見が遅すぎるということはありません。

自閉症の診断
 
 自閉症は複雑な疾患で、発達の専門医や心理学者、神経内科医、精神科医、言語療法士、その他の専門職の人を含めて総合評価が必要になってきます。診断をより容易にするために、いくつもの発達のテストを行うことになるかもしれません。また、聴力異常があると、自閉症に似た症状を出すことがあるので、言語発達の遅延のある子供は聴力検査が先ず必要です。
 自閉症の症状の一部があり、典型的な自閉症でない子供は、PDD-NOSすなわち「他に分類されない広汎性発達障害」に分類されます。自閉症的な症状があっても、知能指数と言語スキルが正常な場合は、アスペルガー症候群と診断されます。正常に発達し、310才の間に突然発達が退行し、著しく自閉症のような行動をする場合は小児崩壊性障害の可能性があります。女子で、自閉的症候群のあるものは、性遺伝子が関与したレット症候群かもしれません。
 
 
自閉症の治療
 
 自閉症を完治する治療法はありませんが、自閉症のある症状を軽減し、社会的適応を促進する治療法は存在します。学習を通じて行動
コミュニケーションを改善する方法、薬物治療、その他サプリメント等を使用した方法です。こうした治療は単独で行われるよりは、いくつかの治療を組み合わせて総合的に行われます。
 

学習を通じた治療
 自閉症の社会的、言語、行動問題を改善するためにいくつもの学習プログラムが作られています。問題行動を減少させて、新しいスキルを教えるプログラム、ある社会的状況でどう行動すればいいかを教えるプログラム、他の人と話する時、どのようにすればコミュニケーションがよく取れるようにするかを教えるプログラム等です。こうした学習プログラムの多くが、応用行動分析(ABA)理論基づいており、好ましい行動を補強し、好ましくない行動を少なくする方法を取っています。
 

薬物療法
 現在、自閉症を完治させたり、自閉症の中心となる症状を改善する薬物治療は存在しません。さらに、自閉症の治療薬としてFDA(食品薬品管理局)より認可されているものはありません。しかし、薬物治療によってある症状を緩和することはできます。例えば、精神刺激薬で、過活動性を改善したり、向精神薬で反復性行動や攻撃的行動をコントロールしたり、抗うつ薬で不安感、うつ状態、強迫神経症的症状を改善したり、抗けいれん薬でけいれんを治療したり——という具合です。自傷などの行為を抑えたり、学習やコミュニケーションに集中できるように薬が処方されることもあります。但し、どの薬もすべての自閉症の子供に効果があるわけではありません。試験的に使用されたり、様々な量や薬の組み合わせで、症状の改善を図る場合もあります。
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRIs―― 抗うつ薬として使われている薬ですが、体内の生化学的システムのアンバランスからくる強迫的行為や不安の治療に使われます。また、反復行動を改善したり、落ち着きのなさ、激情、攻撃的行為を抑えたり、視線が合うように改善する効果を持っています。 
三環系抗うつ薬 ―― うつ状態、強迫的行為の改善に使われます。この薬はSSRIよりも副作用が問題になりますが、特定の人にはより効果が認められることがあります。
精神賦活薬向精神薬 ―― 自閉症の治療に最も研究されている薬です。過活動性を抑えたり、ステレオタイプ行為を抑えたり、引っ込み思案になったり、逆に攻撃的になったりするのを最小限にします。
精神刺激薬 ―― 集中力を高め、過活動性を静めるために使われます。但し、副作用のモニターを頻回に行なう必要があります。
抗不安薬 ―― 不安や、パニック障害を和らげます。
セクレチン ―― セクレチンは小腸から分泌されるホルモンですが、1990年代に、消化器の検査時にセクレチンを投与された自閉症児症状の改善がみられたという報告がありました。ただ、その後の臨床試験では、特に効果は証明されませんでした。
 

理学療法と職業訓練
 理学療法では、体の動きや姿勢、バランスを改善するために活動や運動を勧めます。他の子供と体の接触を避けようとする自閉症の子供を助けたりします。
 職業訓練では、特別に使いやすくしたコンピューターマウスやキーボードを用意したり、自閉症児の興味や能力に見合ったスキルを身に付けるように手伝います。
 

その他の治療法
 アート療法、音楽療法、特別なダイエット、サプリメント、接触や音に対する過敏性を和らげる治療法などがありますが、これらの治療法の効果は必ずしも科学的に評価されているわけではありません。
 
 
自閉症児の両親が行うアプローチ
 
 自閉症児の親が先ず行うアプローチ信頼のできる治療チームを探すということでしょう。アメリカではチームで治療をすることが多いので、多くの場合、かかりつけの小児科医を通じて専門医に紹介され、治療チームに接触することになります。セラピストだけではなく、ソーシャルワーカー、ケアマネージャー、サービスコーディネーターなど、いろいろな職種の人と接触し、法的あるいは財政的な面でも助けてもらうことができます。
 自閉症の子供を育てるのは身体的に疲れ、情緒的にもへとへとになります。親が疲れ切ってしまわないように、リラックスしたり、運動したり、自分の楽しみや活動を行うために時間を割くことも必要です。また、夫婦の結婚生活や他の家族にもストレスになることがあります。連れ合いと外食するような余裕を持つことも必要です。子供が寝た後に一緒にテレビで映画を観たりするだけでも構わないのです。他の子供とも1対1で時間を十分割くことも重要です。こうしたことをするためには、家族以外の社会的サポートが必要になるかもしれません。
 自閉症児のいる他の家族と交わることも大事でしょう。自閉症児を持ち、奮闘している他の家族からいろいろ有用なアドバイスが得られるかもしれません。自閉症児の家族を対象にしたさまざまな団体があります。
 自閉症に対する正しい知識を身に付けることは、自分の自閉症を持った子供をより理解し、その子供が伝えようとしていることをより理解できることに繋がります。
 
 
アメリカでの早期介入と教育プログラム
 
 アメリカでは、どの州もその州独自の早期介入プログラムを持っています。0才から3才までの乳幼児を対象し、行動療法、早期発達教育、コミュニケーションスキル、OT(職業訓練)
PT(理学療法)などが行われます。
 自閉症児は、3才以降高校卒業(あるいは21才)まで無料で公教育を受ける権利を保障されています。自閉症児に対する教育は、11、小グループ、教室による教育の組み合わせで行われます。特別教育を受ける資格がある子供は、子供の家族、教師、学校心理療法士、発達専門家たちが協力して、個別教育プラン(IEP)を作ります。
 
 
自閉症と関係のある障害
 
 自閉症があると、他の障害を持つ確率も高くなります。例えば、精神遅滞を起こす脆弱X症候群、腫瘍が脳内で大きくなっていく結節性硬化症、てんかん、トレット症候群、学習障害、ADHDなどです。
 睡眠障害、アレルギー、消化不良なども自閉症の子供によくみられます。これらは、環境を変えたり、薬による治療可能です。こうした治療は自閉症そのものを改善するわけではありませんが、生活の質の向上に役立ちます。

サンディエゴの地元日系紙「ゆうゆう」の2007年6月1日号に掲載