| 第6回 左半身の筋力の低下(Muscle weakness) |
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質問:55歳になる女性(Aさん)ですが、体の左半身の筋力が弱くてなってきています。原因として考えられるものは?
Aさんの訴えは左半身の筋力低下ですが、まず筋力低下を起こす疾患を考えてみましょう。 筋力低下は、まず主観的な筋力低下と客観的な筋力低下に分けられます。主観的な筋力低下は、例えばインフルエンザや伝染性単核症などの病気にかかった時に「感じ」ます。しかし、この場合、実際には客観的な筋力の低下は起こっていません。客観的に計測可能な筋力低下は、例えば、重症筋無力症、脳梗塞、多発性硬化症などで起こります。客観的な筋力低下は更に、全身性の筋力低下と、部分的あるいは局所的な筋力低下に分類されますが、Aさんのような左半身の筋力低下は、部分的筋力低下に入ります。 筋力低下を起こす原因には、アジソン病、甲状腺クリ-ゼのような内分泌・代謝の異常によって起こるもの、脳梗塞、ギランバレー症候群、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などのような神経疾患、筋ジストロフィー、筋緊張性ジストロフィーなどの筋疾患、有機リン酸やボツリヌスの中毒、あるいは、重症筋無力症、皮膚筋炎/多発性筋炎などの自己免疫疾患、その他ポリオなどの疾患が考えられます。 Aさんの訴えは、左半身の筋力低下ですので、左半身の筋力低下を起こす可能性のあるものを考えると、脳梗塞、脳塞栓症、脳内出血、脳腫瘍、脳内動静脈瘤、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などが挙げられます。脳梗塞及び脳内出血は、一般的に脳卒中と呼ばれていますが、脳内の血管の一部が血栓で詰まるか、血管が壊れて脳内に出血するかで、半身麻痺が起こります。脳梗塞は、脳内の血栓で起こる場合と、心臓などの脳外からの血栓で起こる(塞栓症)に分けられますが、塞栓症は、心臓に不整脈などがあると起こります。脳卒中では、筋力の低下が最も顕著な症状ですが、それ以外にも感覚の低下、筋肉の痙攣、感覚異常、視野の欠損、言語障害などの症状を伴うことも多くあります。ただし、筋力低下以外の症状があまり顕著でない場合もあります。 多発性硬化症(MS=Multiple sclerosis)は、自己免疫疾患の範疇に入る病気で、脳や脊髄の中枢神経系を侵します。原因は分かっていませんが、神経を構成するミエリン鞘にダメージを与えることによって起こっているのではないかと考えられています。多発性硬化症では、いろいろな神経が影響を受けます。長い期間に、様々な部位の神経がいろいろな程度で影響され、しだいに悪くなっていくのです。腕の症状が数週間続いたかと思うと、しばらく何もなく、その後足の症状が数ヶ月続くといったように、症状のある部位も期間も様々なのです。その上全然症状のない状態も続くことがあります。ただし、時間と共に次第に重症化していきます。女性に多く、典型的には、20-40才ぐらいで最初の症状が始まることが多いのですが、何才でも起こります。局所的な筋力の低下、筋けいれん、ふるえ、感覚異常、視力異常、運動異常、歩行異常、めまい、頻尿、排尿障害などの症状も伴うことがあります。 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、筋力低下を主とする病気です。原因はよく分かっていませんが、遺伝も関与していると考えられています。筋力の低下が時間の経過と共に悪くなっていって、しだいに、階段を上ったり、いすから立ち上がったり、あるいは、呼吸をしたり、食べ物を飲み込んだりするのが難しくなったりします。筋力の低下は徐々に起こり、まずは、右手とか、左足とか、部分的な筋力低下から始まるのが普通です。筋肉のけいれんやふるえ、声が変わったり、よだれが出たり、足がむくむこともあります。 このように、局所の筋力低下は、前述のような病気の一症状かもしれませんので、一度神経内科(Neurology)を受診されることをおすすめします。 サンディエゴの地元のウェブサイトsandiegotown.comの2005年11月 に掲載
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